2011年11月1日火曜日

朝の喧噪の中、四両目の階段に一番近い扉から電車に飛び乗る。階段に近いため、同じように息せき切って駆け込んでくる乗客が多い。「間に合った。酷いな。この年で駆け込み乗車なんて。」グレーのジャケットにベージュのコーデュロイの雰囲気のある老人が膝に手をつき、肩を上下にゆらせる、まるでカエルが上下に喉をヒクヒクさせてるように。そんな老人の前に床に座り込んでDSを興じる高校生がいた。つよしとやすきである。彼らは共に四つ先の駅近くにある高校に通っている。「くっそーっ。たまんねーな。どっかいってくんねーか、おやじよ〜。」「こりゃ、すまん。」呼吸をなんとか整えた老人は2メートルほど彼らから離れ、視線を外に反らす。「やれやれ、散々だな。」外は日本晴れの良い天気だ。秋の紅葉も真っ盛り、自然の織り成す色とりどりの景色は良一にとって唯一心癒される景色であった。この年になり、子供も離れ、会社では高圧的な要求に対応するクレーム処理係り、家に帰れば恐妻がまた何かに不満をもち、良一を怒鳴りつけるためだけに待っている。楽しみは自分一人になれる通勤中のひととき、外の紅葉もやがて終わり、窓は都市の風景を映す。窓から目を逸らして出入口の方を再び見ると、相変わらず二人の高校生がゲームに興じている。席が空いてるというのに、なんで床に座るのか。良一には理解できなかった。そこでつい余計な一言を挟み込んでしまう。この一言のために、いつも恐妻の気分を逆なでしてしまうというのに。「そこの高校生諸君!席はいっぱい空いておるぞ、席に座ったらどうかな。」と良一がいうと「聞いた?高校生諸君!だってよ。」そう茶化して言うやすきに対し、つよしは苛立ちげに「うっせー、黙ってろ。」という。

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